インタビュー
株式会社TABIJI
榎本峰子さん
できることを助け合って、喜んでもらえる仕事ができる場所
鴨島町にある就労継続支援B型事業所『ゆいたび』の作業場ではさまざまな障害を抱えた人たちが、互いに助け合いながら朗らかにミシンを踏んだり、パソコンで作業をしたりしています。
ガーゼ仕立てのマスクは、2020年のコロナ禍で評判となり、県内外から多くの引き合いを受けるようになりました。
それは、今ここで就労する人たちの自信や励みにもなっていると言います。
諦める世の中から 選択できる世の中へ
経営者の榎本峰子さんご夫婦が、20年近く福祉の現場で働いてきた経験から最も大切にしているのが「諦める世の中から 選択できる世の中へ」という考え方。
病気や障害などで介護が必要になると、多くの人が最初に諦めてしまうのが娯楽、特に旅行です。
介護の必要な方が旅行するには、トイレ環境や特別職の準備、緊急時の受け入れ先の確保など、多くの課題があるからです。 けれど一方でご本人が亡くなった後、多くのご家族は「元気なうちに家族で旅行したかった」と悔いを口にします。
創業前、峰子さんは、「制度に阻まれることなく、自分たちらしい介護を提供できる施設を作ろう!」と、介護サービス付の宿の経営を考えるようになりました。
起業への第一歩
「私はゼロをイチにすることが好きなんです」と明るい笑顔で話す峰子さん。
とはいえ、ご夫婦の経営経験はゼロ。
そんな時、先輩経営者の紹介で出会ったのが徳島ニュービジネス協議会でした。
まだ漠然としていた峰子さんのイメージをビジネスプランとして形作る過程で、「本当によくしていただきました」と、峰子さんは当時を振り返ります。
徳島ニュービジネス協議会主催の女性起業家を支援するビジネスプランコンペ『シンデレラストーリー』にもエントリー。見事受賞し、地元の先輩経営者に相談するチャンスにも恵まれ、さらには融資にも繋がりました。
そうして得られたいろいろな人のアドバイスで、「いきなり旅館という大きなハコモノとをつくるのはリスクが大きい」とまずは冒頭の『ゆいたび』を2017年に設立しました。
それでも、やはり「介護サービスのある宿をつくりたい」「福祉のことを多くの人に知ってもらいたい」という強い思いから、その後も峰子さんはさまざまなビジネスコンテストに応募しました。徳島ニュービジネス協議会が推薦した日本政策投資銀行主催の女性起業家のプラン表彰事業もその一つで、なんと全国大会のファイナリストにも選ばれ、全国ネットで知名度を拡げるきっかけにもなりました。
みんなの「旅の途中」に集える場を
こうした地道な活動を続けながらも、支援を必要とする旅行者をサポートする団体『徳島ユニバーツーリズム四国支部』を立ち上げるなど、峰子さんは確実に夢の実現へむけた足固めをしてきました。
そんな時、大きな転機が訪れます。
知り合いから「旅館設立前のテストマーケティングの場所として、使っていない家を使わないか」と、持ちかけられます。
『ゆいたび』を立ち上げたばかりの峰子さんは少し悩みましたが、起業仲間の応援もあって、『社団法人民宿 旅の途中』として宿泊施設を創業しました。
「旅の途中」には3つの役割があると言います。
1. 支援が必要な人にも安心して止まってもらえる介助付きの宿
2. 医療・介護従事者の駆け込み寺としての宿
3. 障害者雇用を取り入れている起業と雇用されている方の心の支援をする宿
コロナ禍で思うようなスタートは切れなかったものの、子どもの頃から福祉の仕事を志し、理想と現実の狭間でさまざまな苦労も経験した峰子さんだからこそのアイデアが詰まった『民宿 旅の途中』。
峰子さんが理想として描いている『旅館 旅路』の実現に繋がるよう、大切に育てていきたいと考えています。
DATA
株式会社TABIJI
〒770-0052
徳島県徳島市中島田町3-3-10
TEL 088-635-9292
http://www.yuitabi.jp/