インタビュー

起業・創業

株式会社グリラス
渡邉 崇人さん

無印良品とのコラボで一気に全国区に

2020年5月に発売するや否やメディアやSNSで大きな反響を呼び、あっという間に売り切れた無印良品の「コオロギせんべい」。
鳴門市に本社をおく株式会社グリラスの「コオロギ粉末」を原料に、良品計画との共同開発で商品化されました。 株式会社グリラスは徳島大学発ベンチャー企業。
代表取締役を務める渡邉崇人さんは理工学部で、長年フタホシコオロギを使って発生生物学の研究を行ってきた研究者です。

子どもの頃から培ってきた経営者感覚

渡邉さんは「研究内容を直接、社会で活かす方法はないか」とずっと考えていたそうです。
渡邉さんのご両親は、長年徳島で人気の飲食店を営む経営者。
小さな頃から“いつか自分が跡を継ぐのだろう”と、経営者としてのご両親の背中を間近で見てきました。
「“経営”のことが分かるからこそ、多くの費用がかかる研究の結果を社会に還元して、その対価としてお金が循環する仕組みを作りたいと思ったんです」と、起業へと繋がった思いを話してくれました。

渡邊さんは、2016年頃から食用資源としてコオロギを活用するビジネスに取り組みます。「2013年に国連が昆虫をタンパク源とすべきとのレポートを発表していて、そこから3年経っていました。すでにヨーロッパを中心に動きがありましたから突拍子もない発想という思いはなく、やがて世界がそういう方向に動くと確信していました」。 2019年、満を持して起業。ちょうどその頃、冒頭の無印良品から共同開発依頼の第一報が入ります。

徳島ニュービジネス支援賞

さらに同じ年、徳島ニュービジネス支援賞の大賞を受賞します。
この賞は、徳島で起業家風土を醸成し、成功事例を作る目的で徳島ニュービジネス協議会が1996年に始めたものです。
渡邊さんは「賞金はもちろん、ビジネスの世界で認められたというお墨付きをもらえたことがありがたかった」と話します。

さらに2021年には、オリジナルブランドを立上げ、クッキーとクランチを発売。OEM先は、徳島ニュービジネス協議会の会員で、「おかげで良いお付き合いをさせていただいています」とにっこり微笑む笑顔に、新商品にかける思いがにじみ出ます。

上場を目指して、躍進!

渡邊さんによると「私たちの事業はコオロギの畜産です。コオロギは香ばしい風味でいろんな料理や食材にアレンジしやすい。しかも牛や豚、ニワトリに比べて少ない餌で短期間に育ち、ロスする部分がなく丸ごと食べられます。昆虫の畜産技術が確立できれば、コオロギだけなく、将来本当に必要になった時に他の昆虫にも応用できます」

今後、事業を拡大するために、渡邊さんたちは4つの柱を軸に技術開発を進めています。 まずは「飼育コストの低減」。飼育の人手を削減できるよう、大手企業とも提携して、自動飼育システムの確立を目指しています。

2つめは「品種改良」。大学と連携したゲノム編集技術の開発で、より畜産に適した品種に改良する研究を続けています。

3つめは「フードロスの削減」。廃棄される食品を餌にしてコオロギの養殖を実現することを目指します。「食糧不足を補うためにコオロギを畜産するのだから、畜産のために食糧を無駄にしては意味がない」と渡邉さん。大学と連携することで、環境に優しく、かつ効率的なエサの開発も進めているそうです。

4つめは「市場の開拓」。コオロギはプロテインを多く含みます。「今後はコオロギ特有の機能性なども科学的に明らかにして、高付加価値な食品として選んでもらえるように準備したい」そのための研究も大学で進んでいるのだそうです。

「ひとつひとつ問題をクリアして、5年後には年商100億、上場を目指したいです」。渡邉さんの目は強く輝いていました。

DATA

株式会社グリラス

〒772-0001
徳島県鳴⾨市撫養町⿊崎字松島 45-56
https://gryllus.jp/

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