インタビュー
株式会社 電脳交通
近藤 洋祐さん
家業のタクシー会社を再建、そして…
徳島市幸町に本社を置く「株式会社電脳交通」は2015年創業。
創業者で代表取締役社長の近藤洋祐さんは、大リーガーを目指して単身渡米したという異色の経歴の持ち主です。
「アメリカでは挑戦の連続だった」と話す近藤さん。
ケガなどが続き、結局大リーガーの夢は叶えられませんでした。けれど成果主義を重んじるアメリカでの挑戦は、失敗を恐れず果敢にチャレンジを続ける近藤さんの気質をより堅固なものにしたと言います。
帰国後徳島に帰って、祖父が営んでいた「吉野川タクシー」に就職。ドライバーとしてハンドルを握りました。お客様を乗せて走る現場の経験を積む中で、タクシー業界の課題が少しずつ見えてきたそうです。 やがてマネジメントを任される立場になると、『マタニティタクシー』など独自のサービスを次々打ち出して話題を集めます。そんな地道な取り組みが、少しずつ顧客確保につながり会社再建につながっていきました。 そして同時に、“タクシー業界が社会で果たすべき役割”があることに、近藤さんの目は向き始めます。「吉野川タクシーだけが成功しても意味がない。業界全体が活性化するよう、業界に影響力を発揮できるような企業を作る必要がある」と強く感じるようになったと言います。
ベンチャーキャピタリストとの出会い
近藤さんが新しいビジネスを模索しはじめた2014年、徳島ニュービジネス協議会が初めて「ベンチャーキャンプ(現:startup venture camp)」を開催します。
徳島ニュービジネス協議会の顧問で、日本を代表するベンチャーキャピタリストの村口和孝氏がメインゲストとして招かれることになり、会場の海陽町まで村口氏を送り届けるドライバーとして白羽の矢が当たったのが近藤さんでした。
近藤さんは「どうしても」と頼み込んで、急遽キャンプに参加。
そこで村口氏に「タクシー業界を変えたい」という思いをぶつけました。
村口氏は「現場で培った経験を全国で使えるようにモデル化するべき」とアドバイスし、関連する企業の経営者と引き合わせてくれました。
翌年、徳島ニュービジネス協議会は再度、近藤さんと村口氏を引き合わせる場を設けます。2時間ほど近藤さんの話をじっくり聞いた村口さんは、「投資したくなる経営者だ」と言ってくれたそうです。 さらにその翌年のベンチャーキャンプで、徳島ニュービジネス協議会は近藤さんをパネリストとして起用。地元の将来有望な起業家として紹介します。
この時、村口氏から「いつか必ず投資する」と声をかけられたそうです。
この時、さらに同世代のスタートアップ経営者とも交流を深め、「自分がぼんやり持っていたアイデアが間違いないと確信した」と言います。
ビジネスパートナーとの出会い
近藤さんにはITエンジニアとの良い出会いもありました。
さまざまなスタートアップ企業で交通系システムの開発に携わっていた坂東勇気さんは、交通系の領域では随一の技術を持っていました。
「ドライバーの高齢化や人手不足、マーケットの縮小など、タクシー業界の課題をITの力で解決したい」という近藤さんの思いに共感し、板東さんは2015年、近藤さんと一緒に「電脳交通」を立ち上げ、CTOに就任しました。
2016年秋に「電脳交通」は「徳島ニュービジネス支援賞」で大賞を受賞。
この後 村口氏は約束通り近藤さんに出資をします。
村口氏が投資してくれたことで、複数の投資家が「電脳交通」のビジネスに興味を持ち始め、資金が集まり、ビジネスが軌道に乗っていきました。
「あの時、徳島ニュービジネス協議会が僕にタクシーの運転を任せてくれたことが大きなターニングポイントとなり、徳島ニュービジネス支援賞での受賞が飛躍のチャンスとなりました」と、近藤さんは振り返ります。
タクシーのDXを推進し、世界へ
電脳交通が掲げるのは「タクシーのDX推進」。
事業は「クラウド型配車システム」「共同配車構築・支援サービス」「地域交通ソリューション」の大きく3つの柱で成り立っています。
「タクシーは地域のインフラとして必要なものです。
だからこそタクシー業界の内部から変えていきたいんです」と近藤さんは言葉に力を込めます。
高齢化が進む中で、ドアtoドアの移動手段のニーズが少しずつ増加し、タクシーの担う役割も大きく見直されています。
そうした世の中の流れと業界の変容・成長に合わせて10年、20年といった長いスパンで事業計画を考えているのが「電脳交通」の強みだと言います。
こうした「電脳交通」の志に共感し“次の時代のインフラを一緒に作っていこ
う”と大手企業からの出資や資本業務提携の申し出が続きます。
JR西日本イノベーションズ、NTTドコモ、三菱商事、JR東日本スタートアップといった提携先もそうした流れの中で出合った企業です。
「名だたる企業と一緒に事業に取り組むことで、視座をどんどん高くする機会を与えていただき、すごく恵まれた環境で経営させてもらっています」と近藤さん。
タクシー業界の衰退が加速度的に進む中、大手企業と連携することで一刻も早く全国展開をして課題解決のペースを上げていくことが必要だと言います。
将来は世界への展開も見据えているとのこと。
「電脳交通を徳島だけでなく日本を代表する企業に育てていきたいです」と、目を輝かせました。
DATA
株式会社電脳交通
〒770-0847 徳島県徳島市幸町3丁目101 リーガルアクシスビル 4F
TEL 088-679-1601
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